TOP > ヴェルディア幻奏曲
十年かぶりに足を踏み入れた故郷『ウィーネフェルト』。
街と人の存在を支える大樹が花を咲かせ、更にはお祭り『ヴェルディア祭』を控え、活気に溢れていた。
空腹と疲れによって行き倒れになる、なんていう頭の痛い到着は、僕に貴重な出会いをくれた。
というのも、行き倒れた僕に手を差し伸べてくれた少女は不思議な力を持っていたのだ。
『フィーナ』、彼女は楽器を召喚するという、普通にはあり得ない力の持ち主だった。
呼び出されたハープから奏でられる、優しくて温かい音色…………
胸の中に広がる音に、僕はしばらく我を忘れて聞き入っていた。
ヴェルディア祭では、大樹に感謝を捧げるための演奏会がある。
その予選に参加を決めていた僕は、一緒に出てくれるメンバーを探していたんだ。
こんな娘を誘わない手はないんだけど……
同じように演奏会を目指すライバルたち。
降り始めの雨のように、ぽつぽつと街で起こり始める異変。
最初は奏でる楽器の音色で掻き消せていたそれも、何も聞こえないほどの土砂降りになっていく。
僕らの音を街に響かせることはできるのだろうか。
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