世界観
物語
ある夏の夜、海辺の限界集落『心珠町』を直撃した嵐。
災害は土地と住人の心に大きな傷をつけ、
やがて町からは人の姿が消えた。
多くの満たされない想いと秘密を置き去りにして……。
それから7年後の夏、大学生の川倉黎一は
廃村となった心珠町にひとり足を踏み入れる。
きっかけは亡くなった祖父の遺言。
一時期祖父と暮らしていた家の処遇を
決めるための、ちょっとした里帰り。
そして――懐かしい景色と匂いを残しながら
どこか別世界のような廃墟の町で、
黎一は『シンジュ』と名乗る少女に出会った。
「黎一……貴方には巫女と匣を満たす、
贄になってもらうわ」
外界から切り離された心珠町に閉じ込められる、
黎一と4人の少女たち。
シンジュとそっくりな幼馴染『御汐陽渚』。
陽渚と同じ心珠町時代の幼馴染で妹分『新沼鈴』。
町に伝わる宝を探す少女『龍ヶ燈やちよ』。
黎一を追って巻き込まれた大学の同期『都築七々瀬』。
共に囚われた彼女たちを犯し孕ませろと、
シンジュは黎一に求める。
協力し脱出する術を探す黎一たちだが、
町を閉ざす淫靡な力が、過去と因縁が、
彼らを淫蕩の渦へと誘い、町は嬌声に満ちていく。
鏡合わせの二人の少女。
欠けた記憶と、かつて交わした約束。
町で祀られる神の正体。
置き去りの廃村に眠る、願いと罪。
隠された真実と対峙し、
黎一たちは元の世界に帰る事ができるのか?
秘められし匣に眠るのは、
約束の希望か、
甘美に堕ちる欲望か――――
舞台
心珠町
黎一、陽渚、鈴が昔暮らしていた海辺の集落。
7年前に町を襲った嵐とそれによる土砂崩れがきっかけで住人が離れていき、
現在は誰も住んでいない廃村となっている。
狭い区域に家屋が密集する町は海側と山側にわかれており、
海側は港を中心とした漁師町、山側はかつて町が賑わった頃の古い町並みが残っている。
御汐神社と睦峰神社
心珠町の海側と山側にある二つの神社。
海側が御汐神社で、山側が睦峰神社。それぞれ御汐陽渚と睦峰月海の生家でもある。
両社ともに心珠町土着の神である『オハコ様』を祭神としており、
心珠町に暮らす人々の精神的な拠り所になっていた。
7年前に起きた土砂崩れによって、睦峰神社の大半は土砂に埋もれてしまっている。
心珠山
心珠町を抱くように広がる深い山。
古くから『オハコ様』の山として神聖視され、山から切り出された木材は船や家屋、家具などに
利用され集落の生活を支えてきた。
過去、小規模ながら良質な鉱物が採れる鉱脈が見つかって鉱山が開かれていた時代もあり、
山中にいくつか坑道跡が残っている。
川倉邸/学校/廃駅
その他、廃村内にある各施設。
用語
オハコ様
心珠町で信仰されていた土着神。
浜辺に漂着した竜宮の姫が、村の男と夫婦になったという伝説が町には伝わっており、
『オハコ様』は姫が竜宮に帰る際に残していった宝――『匣』だと言われている。
航海安全や豊漁、子授けなどのご利益のほか、
心願成就を助ける神として町の人々から親しみを持って敬われていた。
匣
箱。ものを入れておくための器。
心珠町において匣は特別なものであり、見られたくない物、無くしたくない物は、
匣に入れておくことで、いつまでも守られると言われていた。
人形
紙や木、土などを使って人の形を模して作られたもの。
心珠町では、持ち主に降りかかる不幸や災いを人形が代わりに引き受けてくれる、
込めた願いを神様に届けてくれると信じられ、
役目を終えた人形は御汐神社と睦峰神社に納められた。
夏祭り
心珠町で年に一度、町をあげて行われていたお祭り。
1年の無病息災を喜び、オハコ様と竜宮の姫に感謝を伝えるための行事で、
この日だけは出て行った若者たちも帰って来て町が賑わったという。
心珠土砂災害
7年前、心珠町を襲った災害。
大雨によって発生した心珠山の土砂崩れに、御汐神社をはじめとする町の一部が飲み込まれ、
道路も寸断されて町は一時孤立状態となった。
御汐神社、睦峰神社の両宮司が犠牲になり、睦峰家の娘も行方不明になっている。
一時は町の復興が図られたが、結局、誰もいなくなってしまった。