武原こはく支援SS 『病弱な雌牛、その誕生日』 すせり「皆さん、ご機嫌麗しゅうございますわ!」 こはく「ございます〜」 こはく「それで今日はいったい?」 すせり「ええ。今日はあなたの誕生日でしたわね?」 こはく「そうですよ。お祝いのメールを二通もいただきました」 すせり「そこで、誕生日プレゼントとして、この私が自らあなたの支援SSを作成してあげましたわ」 こはく「え、ええー!? す、すせりちゃんがですかぁ!?」 こはく「な、何が目的なんですか?」 こはく「お金ですか!? それとも、もしかしてお兄ちゃんの命と引き替えに…」 すせり「だまらっしゃい、この牛海綿状脳症が!」 こはく「!?」 すせり「どうしてこの私が人気投票すらあんな顔でエントリーさせられるゴキとウジの眷属の命などを引き替えにしなければならないのですか!」 こはく「…す、すせりちゃん?」 すせり「…なにか?」 こはく「すせりちゃん、勉強はできないのに、そんな『普通に暮らす人があまり使わない言葉』ばかりよく知ってるなって思って…」 すせり「…」 こはく「…」 すせり「…こはく?」ニコニコ こはく「…?」 ゲシゲシッ! こはく「…ひ、非道いですよぉ…」 すせり「そこの洗濯板乳牛! ウェルダンとミディアムのどちらか好きな方を選んでくださいまし!」 こはく「わ、私、調理されちゃうんですか!?」 こはく「って、どっちも火傷しちゃいます!」 こはく「…」 こはく「…せめてレアにしてください」 すせり「却下ですわ」 こはく「…しょんぼりですね」 こはく「…ところですせりちゃん?」 すせり「なんです? 私はステーキの準備で忙しいのですけど」 こはく「…調理する気満々なんですね…それよりも、この会話って、私の支援SSなんですよね?」 すせり「それがなにか?」 こはく「全然SSっぽくないし…なによりも、私よりすせりちゃんの方が目立ってるなって思って…」 すせり「…」 こはく「…」 すせり「…こはく?」ニコニコ こはく「…?」 ゲシゲシゲシメゴシッッ! こはく「…ひ、非道いですよ…最後なんて、なにかが陥没するような変な音がしてましたよぉ?」 すせり「そこの洗濯板乳牛! 人として死を迎えるか、牛として食されるか、どちらか好きな方を選んでくださいまし!」 こはく「…いずれにしても、お先真っ暗ですね」 すせり「そういえば、あなたの誕生日のことをお兄様に教えたところ、祝いに行きたいと言っていましたわ」 こはく「ほ、本当ですか!?」 すせり「その後、すぐに用事がはいって、現在は海外に行っていますけど」 こはく「…しょんぼりですね」 すせり「仕方がありませんから、私がお兄様からあなた宛のプレゼントを預かってきましたわ」 こはく「…す、すせりちゃん…やっぱり本当はいい人だったんですね…」 すせり「家畜に施しを与えるのは飼い主として当然のことですわ」 こはく「…やっぱり本当は情け容赦ない人だったんですね」 すせり「まぁ、そんなことはどうでもいいですわ。それよりもはやく受け取ってくださいまし」 こはく「…すせりちゃん?」 すせり「なにか?」 こはく「このプレゼント、なにか開封跡みたいなものが見えますけど…」 すせり「ああ、それは私が中身を確認した跡ですわ」 こはく「…どうしてすせりちゃんが中身を確認するんですか…?」 すせり「そんなの、中身が高価な物だった時は私の用意したわら人形とすり替えるために決まっていますわ!!」 こはく「…キッパリと言い切らないで欲しいです」 すせり「まあ、せっかくの誕生日ですから、今回だけは見逃してあげますわ」 こはく「…次からは見逃さないんですね」 すせり「そんなことよりも、さっさと中身を確認してくださいまし!」 こはく「…あ」 こはく「…」 こはく「ありがとう、すせりちゃん」 すせり「それを用意したのはお兄様ですわ」 こはく「…でも、すせりちゃんにもありがとう…です。私の誕生日を祝いに来てくれましたから…」 すせり「…変わった牛ですわね。自らをステーキに調理する相手に向かってお礼を言うなどと…」 こはく「違いますけど…というより、まだ調理の準備していたんですね」 すせり「もちろんですわ。せっかく、一流シェフ顔負けの私の料理をあなたにご馳走してあげますのに、やる気をそがないでくださいまし」 すせり「材料もちゃんと三人分用意してきましたのよ? 虫けらのフンを食べるボウフラのようなあなたのお兄さんの分も」 こはく「え…? それって本物の牛ステーキ…?」 すせり「まったく、私も本当ならお兄様と一緒にでかけていたところを…」 すせり「あなたのお兄さんが涙を流しながら頭を地べたにこすりつけて土下座までして頼むものですから…」 亮一 「こら〜! 葦原妹! オレは普通に誘っただけだろ!」 すせり「あら? 婦女子の会話を横で盗み聞きとは、相変わらずマナーをわきまえた方ですわね。ほほほっ…」 亮一 「このクソジャリ! 今日という今日はもう…」 こはく「相変わらず仲がいいんですね〜」 亮一 「どこが!?」 亮一 「…それより、オレは葦原妹を手伝うから、お前は座って待ってろよ。今日はお前の誕生日なんだからな」 こはく(…) こはく(…すせりちゃん、武流さん、お兄ちゃん…本当にありがとう。) こはく(…私はとても幸せです。)